エコツーリズムで地域を元気にしようとしているNPOなんだよ。
エコツーリズムとエコツアーは違うの? |
|
日本エコツーリズムセンターってどんなNPOなの? | |||||
「エコツーリズムで地域を元気にしよう!」を合い言葉に、エコツーリズムの第一線で活躍する実践者、研究者らが集まった、全国的な組織だよ。エコツーリズムを普及するために地域や事業者を支援したり、エコツアーをみんなに知ってもらうために、「エコツアー・ドット・ジェイピー」というウェブサイトも運営しているよ。日本エコツーリズムセンターは「エコセン」って 呼んでね。ケロ。 |
|
||||
「エコツーリズムで地域を元気にしよう!」って、どういうことなの? そもそも「エコツーリズム」って何なの? 「エコツアー」とどう違うの? | |||||
エコツアーをひとことでいえば「環境保全型の旅行」のこと。環境と観光の調和をとり、自然や地域固有の文化を壊したりしない旅行、つまり、環境にやさしい旅行のことだよ。一方のエコツーリズムは「ism」という言葉がつくことからも分かるように、その理念や考え方のことなんだ。 | |||||
エコツーリズムって理念のことなんだ。で、どういう理念や考え方なの? | |||||
国や地域、団体や研究者によって、みんな違っていて、しっかりとした定義があるわけじゃないんだ。欧米では、国立公園を舞台にした自然を体験するツアーが一般的で、どちらかといえば、自然や環境を持続可能なものにしていくために、自然や人を「管理」していこうという考え方が多い。一方、日本では管理よりも「共生」という感覚のほうが近いかも。 | |||||
あー、それって、なんとなく分かる。 | |||||
日本では自然体験だけでなく、生活文化や歴史、地域産業を体験するツアーなども含まれているんだよ。 場所も国立公園だけでなく、里地や里山、里海、さらには東京のどまん中で行われるているツアーまである。地域のさまざまな資源を生かしながら、その地域の発展を考えようというのが日本のエコツーリズムなんだ。都市と農山村の交流や、環境教育も日本ではエコツーリズムって言っている場合があるよ。 |
|||||
ふーん、日本のエコツーリズムって幅広いんだね。ところで、最近「グリーンツーリズム」ってよく耳にするけれど、これもエコツーリズムなの? | |||||
エコツーリズムに含まれるもの、といえるね。グリーンツーリズムは農村体験を対象にしているから、エリアを問わないエコツーリズムよりも限られた範囲なんだ。グリーンツーリズムの多くは環境や地域に配慮したものになっているけれど、必ずしも全部がそうとは言えないものもあるので、グリーンツーリズムの中にエコツーリズムがあるという見方もあるんだよ。 |
元気のない地域ってどんなところ? |
で、エコセンは、どうやってエコツーリズムで地域を元気にしようとしているの? | |||||
そもそも、元気のない地域って、どういう地域だと思う? | |||||
そうねえ、若者はみんな都会に出ていっちゃって、里山も田畑も跡を継いでくれる人がいない・・とか。 | |||||
そのとおりだね。たとえば「過疎」と呼ばれる集落は、平成18年度の国土交通省の調査によると62,273箇所あり、今後10年以内に消滅が予測される集落は423、いずれ消滅が予測される集落と合わせると全体の4.2%(2,643集落)がなくなるという。 |
|
||||
すごいことになっているのね。でも、日本では少子高齢化が進んでいるんだから、消滅するのは仕方ないんじゃない? 人のあまりいない地域を保全したり、福祉に税金をかけたりするのってムダでしょう? みんな都会で暮らせばお年寄りも安心した生活がおくれるわ。
|
|||||
じゃあ、人がいなくなった地域の山林や田畑はどうなるの? | |||||
都会から通勤して働けばいいと思うな。農業法人とか林業法人とかをつくって。それだったら、農業や林業をやってもいいという若者もいっぱい出てくるんじゃない? | |||||
農業や林業はそう簡単なもんではないんだよ。農作物も森林も生き物で非常に手間がかかるものだから、通勤して世話をするというのは難しいんじゃないかな。農業法人は確かに増えてきてはいるけれど、交通が不便な過疎地域や、山の斜面につくった小さな田畑まではなかなか手をつけられない。それに、一度耕作放棄された土地をふたたび元の農地に戻すには、ものすごく時間がかかるんだ。 | |||||
言われてみれば、そうね・・・。 | |||||
日本の食料自給率は約40%と、先進国の中ですごく低いことは知っているだろ。じゃあ、輸入にすべて頼ればいいかというと、食品の安全性が問われるケースは今後も増えるだろうし、世界的な人口増加や原油価格の上昇、円安の進行などで、この先、輸入食品が買えなくなってしまうことだって考えられる。 小規模な農家などでつくっている自給的な農作物は生産統計に出てこないけれど、エコセン世話人の福井隆さんによると、相当な生産量になるらしい。「田舎から野菜を送ってもらえる人」は、けっこう身近にいるしね。集落が消滅し、耕作放棄地が増えるということは、日本の食料危機に直結するんだよ。 |
|||||
う、うーん。そうよねぇ。食べものはコンビニで生産されているわけじゃないのよね。わたしも田舎のおばあちゃんに野菜やお米を送ってもらっているけど、相当助かっているわ。 |
崩壊した棚田
|
||||
それに、人が住まなくなった土地には、今も問題になっているけれど、違法投棄が増える可能性がある。川の上流で危ないものが捨てられ、土壌が汚染されて水が汚れたら・・。 | |||||
こ、こわーい。 | |||||
日本の自然って、人が手入れしているからこそ、美しい景観が保たれているんだ。過疎といわれる地域にある田畑や山の斜面につくられた棚田、先祖代々管理してきた山林を、誰も管理しなくなったら、土砂くずれが起きて河川が埋まってしまい、その地域の下にある田畑に水が流れず、都会で使う水も減ってしまうことが考えられるよね。 |
|||||
自然はつながっているというけれど、地域と地域、地域と都市もつながっているのね。 | |||||
山林も同じことがいえるよ。日本の国土の7割が山林だけど、国内産の木材はコストが高いっていうんで売れなくなり、山林の手入れをする人たちが減ってしまっているよね。 山の手入れも過疎にいる人たちが中心になって行ってきたけど、高齢化でどんどん森林は荒れ、その結果、森林が持っている水を蓄える能力や二酸化炭素を吸収する能力失われ、土砂崩れや洪水、水不足などの災害も発生しやすくなっている。これも都市住民と直結する話だよね。 日本は自国の木材を2割くらいしか使わずに、それ以外は外国から輸入しているけれど、その外国では木材伐採による環境問題が深刻化している。お金を出しさえすれば、外国は木材やパルプを売ってくれるけど、それは「自分だけがよければ」というのと同じこと。外国の環境なんてどうなってもいいとは思わないだろ。 |
|||||
そうね。すぐに自分たちの問題になるのよね。 | |||||
それに、過疎集落の人たちを、都会に連れてきて住まわせることがほんとにいいのか、という問題もある。住み慣れた土地を離れるのは、すごいストレスになるし、生き甲斐もなくしてしまうよね。 いま、若者を中心に「ワーキング・プア」が大きな社会問題化しているけれど、帰る場所としての田舎がないという「セーフティネット」がないことも、ワーキング・プアの原因のひとつといわれている。 都会暮らしは確かに便利かもしれないけれど、人を容易に孤立させるし、お金がないと何もできないし、暮らせない。少子高齢化で税金も増えないから、地域を見捨てようという考えは、日本人を崖っぷちに追い込むことになるんだ。 それに地震など、自然災害が多いのが日本なんだから、集中よりも分散を考えたほうが、セーフティネットになるはずだよ。 |
エコツーリズムで地域が元気になる! |
で、エコーリズムがどう地域の元気に結びつくかというと・・・。 | |||||
待ってました♪ | |||||
地域が元気になるには、若者がいることが不可欠だけど、なぜ若者は地域を出ちゃうの? | |||||
そりゃ、農家などの跡を継ぐくらいしか仕事がないし、娯楽もなくてつまんないし。 | |||||
農業や地域の仕事、地域の文化、家族を含む地域住民との人間関係に、誇りや愛情を持てなくなっているからともいえるよね。 | |||||
そうね。誇りや愛情があれば、思いとどまる理由のひとつにはなるわ。 | |||||
若者だけでなく、その両親の世代や高齢者の人たちも誇りを失いつつあると、エコセンでは考えているんだ。 | |||||
どういうこと? | |||||
地域に行って彼らに話しを聞くと「ここにはコンビニもない、何もないところだから」とか、「農業なんていう、つらい仕事は子供たちに継がせられない」とか言って悲観的なんだ。自分の楽しみは、パチンコやゲートボールだと公言したりするのをよく聞くんだよ。 | |||||
わからなくはないわ。 | |||||
でも、「何もない」と地域の人たちが思っているところに、都会の人たちがエコツアーなどで行くと実はすごく感動しちゃうものなんだよ。手入れされて美しい里地・里山、小川のせせらぎ、採れたての食材をつかった手料理、カゴや織物などの手作り品、道具、お祭り、遊び、風習、水、空気、風の音、野鳥の鳴き声、虫の音、蛍、夕焼け、星空、情緒、人情・・・。何もないどころか、都会にはないすてきなものばかりがある。 | |||||
あるある。だからわたし、田舎大好きなんだ。 | |||||
そうしたものを素直に「すてきだ」と言うと、地域の人たちは驚き、そしてすごく喜ぶ。自分たちのふだんのくらしや環境、昔から受け継いできたものは、実は誇りに思っていいもの、都会人にはうらやましいものだと、気付くんだよ。 | |||||
そうよね。誰か他人に認められてはじめて、自分という存在を確認できたりするものよね。 | |||||
その誇りの発見というか、再生をお手伝いしようというのがエコセンなんだ。 |
|
||||
具体的にはどうするの? | |||||
講演会やシンポジウム、エコツアーガイド講習会、エコツーリズムコーディネーター講習会、エコツアーカフェなどを通じて、地域に人々が集まる「場」をつくり、地域にあるものを再発見してもらったり、人と人とのつながりを新たに構築してもらうんだ。 |
|||||
外部の人が言ってくれないと、内部の人には分からないことってあるよね。エコセンからは誰が行くの? | |||||
「世話人」たちさ。地域に根ざしたエコツーリズムを実践している人や、地域活性化のために全国を歩いている研究者や指導者たちで、このエコツーリズムの世界では著名な人ばかり。世話人は、地域が元気になるにはどうしたらいいかといった事例や、エコツーリズムを地域に根付かせるための具体的な方法論を知っている。 |
|||||
世話人って、地域に元気をもたらす「世話人」であり「地域の応援団」なんだね。 | |||||
いいこと言うね♪ |
|||||
地域でエコツアーをつくったりもするの? | |||||
地元の人たちに向けて、地域のよいところを再確認するエコツアーをつくり、子供も大人もみんなが参加するようになれば、自分たちの住む土地がもっと好きになれるはずだよね。さらに、都会の人を呼べるようなツアーをつくることができれば、都市との交流が生まれ、若者を地域に強力に引き留める有力な産業のひとつになる。エコツアーを行う人だけでなく、宿泊、交通、飲食店、お土産屋さんなど、関連産業の活性化も期待できるよ。 |
|||||
それはいいわね。でも、簡単にうまくいく? | |||||
簡単とはいえないね。ただ、仮にエコツアーを企画できなくても、地域の課題が明確になり、みんなで共有できるようになる。「地域の未来を一緒に考えよう」という人たちのつながりがその地に誕生するから、今後の地域活性化に期待が持てるようになるはずだよ。 地域の人たちが再び誇りを持っていきいきと生きるようになれば、産地直送の事業やグリーンツーリズム、地域内の文化交流なんかが生まれるかもしれない。エコツアーカフェTOKYOの「葉っぱで2億円稼ぐおばあちゃんたち」で鹿熊勤さんが話してくれたけれど、地域が元気になると、自治体の医療費負担もぐんと下がるんだって。 |
|
||||
わたしも、そのときのエコツアーカフェ行ったよ。そうか、エコツアーカフェって、人がつながる「場」でもあったんだね。 | |||||
昔は、地域の人が気軽に集まれる場所や、共同作業を行う「結」(ゆい)、「隣組」とかがふつうにあったけれど、いまは少なくなってきている。エコツアーカフェは、沖縄の「ゆんたく」に近いのかもしれないけれど、楽しくおしゃべりできて、人と人とのつながりがそこで生まれれば、きっと新しいことができるようになるはずだよね。 エコセンでは、いろんなところで「エコツアーカフェをはじめませんか」って言って回っているんだ。みんなが集まれる場所をつくろうって。友達になろうって。 |
|||||
そうなれば楽しいね。また行きたくなったわ。今度はいつ? | |||||
東京では毎月第一木曜日。神戸は原則的に毎月第一月曜日。それ以外にも各地で続々行われ、すでに全国で10数箇所に広がっているんだよ。 |
|
||||
じゃあ、今度カレシ誘って行くね。 | |||||
ええっ・・・ゲロゲロ。 | |||||
えへへ♪ ケロケロ。 |